奇門遁甲

 歴史

 

「百済の僧、観勒来けり。よりて暦の本及び天文地理の書、あわせて遁甲方術の書をたてまつる。是の時に書生三十四人を選びて、観勒に学び習はしむ」『日本書紀』西暦602年に朝鮮半島より遁甲方術書がもたらされた記録が記されている。この遁甲方術が現在の奇門遁甲または八門遁甲と呼ばれる占術とされている。

 

奇門遁甲では九星においてあらかじめ吉凶が定められている。

五黄を除いた八星には門名があり、北に位置する一白は休門、坤に位置する二黒は死門、震に位置する三碧は傷門、巽に位置する四緑は杜門、五黄は中宮のため門はなし、乾に位置する六白は開門、兌に位置する七赤は驚門、艮に位置する八白は生門、離に位置する九紫は景門で、このうち休、生、開にあたる白(一白、六白、八白)と景にあたる紫(九紫)の四門が吉で、死、傷、杜、驚の四門が凶であるとしている。

 

八門の出自は中国古典書『黄帝内経』「九宮八風篇」と思われる。

八門からは八風が吹くとあり、立春に吹く風を條風(丑寅の風)、春分に吹く風を明庶風(震卦の風)、立夏に吹く風を清明風、夏至に吹く風を景風、立秋に吹く風を涼風、秋分に吹く風を閶闔風、立冬に吹く風を不周風、冬至に吹く風を廣莫風としており、易の八卦に配当されている。

 

白と紫を吉とみる所以は、紫白星を貴い星と見ていることからきている。紫白星とは北斗九星(北斗七星プラス左輔と右弼)を指して云う。

一白水星は貧狼(とんろう)、二黒土星は巨門(こもん)、三碧木星は禄存(ろくそん)、四緑木星は文曲(ぶんきょく)、五黄土星は廉貞(れんてい)、六白金星は武曲(ぶきょく)、七赤金星は破軍(はぐん)と、武曲の左右に位置する小さな星、左が左輔(さほ)で八白土星、右の右弼(うひつ)に九紫火星が当てはめられている。

奇門遁甲では、北斗九星を天、九星を地、八門を人として見た「天・地・人」の構成で成り立っている。

 

現在

時代変遷を繰り返し、現在の日本では引っ越しにおける吉日選定、風水における吉方位判定など、方位の吉凶判断に応用されている。

 

同じ方位の吉凶判断において、奇門遁甲が九星(一白・二黒・三碧・・・)占と異なる点は、作盤に複数の要素を取り入れていることである。それにより九星より確実性が高く、即効性があるという。

 最も異なる点は五黄殺・暗剣殺をさほど重要視していないことにある。

 

五黄殺・暗剣殺を重要視しない理由

九星における五黄土星の定位置は中央であり方位を持たない。

中央の土は五行の土、十干では戊己、十二支では丑・辰・未・戌であり、中央の土が季節を巡るとき(季節の終わりに18日間巡る土用の丑・辰・未・戌日)に方位を持つ。

一般的に季節は春→夏→秋→冬と直接切り替わることはない。土用という季節の変わり目に置かれる土の作用によって穏やかな流れのなかで切り替わる。これにより土の作用を変化と捉える考えが生まれた。さらに土用は土気が強いことから土に関する行いは避けたほうが無難とされるようになり、建築における基礎工事、棟上げ等、土にまつわる作業は避けるようになった。

 このようなことから変化=凶という考えが生まれ、土気の王である五黄とそれに向き合う九星が恐れられるようになった。


遁甲盤

奇門遁甲で占う遁甲盤には、9つのマスがあり、1マスの中には天・地(十干)、九宮、八門、八神、九星が配置される。


九宮

九宮が、いわゆる九星占いの一白から九紫をいう。

 

一白(吉)・二黒(平)・三碧(平)・四緑(平)・五黄(凶)・六白(吉)・七赤(平)・八白(吉)・九紫(吉)


陽遁と隠遁

九宮の流れは陽遁と隠遁に分かれる。

 

陽遁は、陽1→陽2→陽3→陽4→陽5→陽6→陽7→陽8→陽9の順に巡行し、隠遁は陰9→陰8→陰7→陰6→陰5→陰4→陰3→陰2→陰1と逆順する。

季節の巡りのなかで陽遁は冬至で陽に切り替わり、隠遁は夏至で陰となる。


八門

八門には、3つの大吉、1つの中吉、3つの凶、1つの大凶がある。

 

休門(大吉)・生門(大吉)・開門(大吉)・景門(中吉)・傷門(凶)・杜門(凶)・驚門(凶)・死門(大凶)


天・地 [十干(尊・三奇・六儀)]

十干(甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)のうち、甲は最も尊いとされる尊、乙丙丁は三奇、戊己庚辛壬癸を六儀とする。

天干のうち甲は一番尊い干、三奇(乙丙丁)は優れた重臣、六儀(戊己庚辛壬癸)は側近。

一般的な十干の順とは異なり、甲は含まず戊→己→庚→辛→壬→癸→丁→丙→乙と配置していく。


時刻の干支

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九星

奇門遁甲でいう九星は九星占とは異なる。

 

天輔(てんほ・大吉)、天禽(てんきん・大吉)、天心(てんしん・大吉)、天冲(てんちゅう・吉)、天柱(てんちゅう・吉)、天任(てんにん・吉)、天英(てんえい・凶)、天蓬(てんほう・大凶)、天芮(てんだい・大凶)。

九星での吉凶は、影響の強弱が小さく、八門との組み合わせで判断する場合が多い。

任→英→蓬→芮→冲→輔→心→柱で九宮巡りで配置していく。

 注:九星占術の九星とは異なり、奇門遁甲でいうところの九星。


八神

八神においても吉凶が分かれる。

 

直符(ちょくふ・吉)、太陰(たいいん・吉)、六合(りくごう・吉)、九地(きゅうち・)、九天(きゅうてん・吉)、縢蛇(とうだ・凶)、勾陳(こうちん・凶)、朱雀(すざく・凶)。

陽局定位

陰局定位



定位配置

上記をマスに配置したものが下図である。1マス内に九星、八神、天、地、九宮、八門が配置され、それが9マスあり、日により陰局(隠遁の巡り)と陽局(陽遁の巡り)にわかれる。

青系は吉、赤系は凶、黒は平(良くもなく悪くもなく)。


天干陽遁の巡り



地干陰遁の巡り



上記すべて北上です。